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 Dr’sメール【発作性心房細動から持続性心房細動への進行は有害事象と相関する】

2019/08/14

岐阜ハートセンター 循環器内科 医長

祖父江 嘉洋先生

 【発作性心房細動から持続性心房細動への進行は有害事象と相関する】

 

Progression From Paroxysmal to Sustained Atrial Fibrillation Is Associated With Increased Adverse Events

 

Hisashi Ogawa, MD; Yoshimori An, MD; Syuhei Ikeda, MD; Yuya Aono, MD;

Kosuke Doi, MD; Mitsuru Ishii, MD; Moritake Iguchi, MD, PhD; Nobutoyo Masunaga, MD; Masahiro Esato, MD, PhD; Hikari Tsuji, MD, PhD; Hiromichi Wada, MD, PhD;

Koji Hasegawa, MD, PhD; Mitsuru Abe, MD, PhD; Gregory Y.H. Lip, MD*;

Masaharu Akao, MD, PhD*; on behalf of the Fushimi AF Registry Investigators†

 

Stroke 2018;49:2301-2308

 

【背景】

心房細動(Atrial fibrillation; AF)は高齢者に認められる一般的な不整脈であるが、その経過中に発作性から持続性への移行が認められることがある。しかしその移行が臨床的予後への影響については不明である。今回、この研究では持続性心房細動への移行する患者の特徴と、その意義について検討した。

                                                                                     

【方法】

京都伏見区における心房細動の前向き登録研究によるFushimi AF Registryのデータを用いた。4045人を解析し、その内訳は登録時、1974(48.8%)の発作性心房細動(paroxysmal AF; PAF)であった1974(48.8%)と、登録時持続性もしくは永続性心房細動(sustained AF; SAF)であった2071(51.2%)を解析した。

 

【結果】

1105日の平均観察期間において、PAF患者において252(4.22%/)SAFへ移行した。多変量解析の結果、PAFからSAFへの移行はその移行期間中に有意に虚血性脳卒中および全身性塞栓症と相関した(ハザード比; HR 4.10; 95%信頼区間1.95-8.24, p<0.001 [vs. SAFへの移行のないPAF], HR 2.20; 95%信頼区間1.11-4.00, p=0.025 [vs. SAF])。持続性心房細動への移行後の虚血性脳卒中および全身塞栓症のリスクはSAFと同等であった(HR 1.54; 95%信頼区間0.78-2.75, p=0.201 [vs. SAF])。またSAFへの移行は有意に心不全による入院と相関していた(HR 2.70; 95%信頼区間1.55-4.52, p<0.001 [vs. SAFへの移行のないPAF], HR 1.81; 95%信頼区間1.08-2.88, p=0.026 [vs. SAF] )

 

【結語】

日本人のAF患者において、PAFからSAFへの移行は、その移行期間中の臨床的有害事象増加と相関をしていた。そのリスクは一過性にその移行期間中に増加するが、進行後はSAFと同等レベルまで減退した。

 

【コメント】

心房細動はその持続時間により、発作性、持続性、永続性と大別される。発作性は自然停止する心房細動で多くは48時間以内に停止する。持続性は自然停止せず、7日以上持続し、洞調律化のため、薬物的もしくは電気的除細動を必要とする。永続性は洞調律へ復することなく持続し、洞調律化を目指すことがない場合を指す。心房細動の自然経過は発作性、持続性、永続性へと進行することが一般的であるが、その経過における臨床的有害事象(虚血性脳卒中、心不全等)との相関については不明であった。これまでにフラミンガム研究において心房細動のない患者と比較し、心房細動患者における予後は不良であり、その差は発症1年以内にあることがすでに報告されていた(Benjamin EJ, et al. Circulation; 98 : 946: 1998)。しかし、その詳細な経過は不明であった。今回、PAFからSAFへの移行が年率4%で認められ、そして多変量のロジスティック回帰分析にて①PAF同定後2年以上経過している(オッズ比; OR 1.92)、②40mm以上の左房径(OR 1.52)、③日常的な飲酒(OR 2.22)、④心筋症(OR 2.56)が有意に移行と相関していたことを証明し、そしてその移行1年以内に虚血性脳卒中・全身性塞栓症、心不全入院が増加することを報告したことは有意義である。

近年、カテーテルアブレーションの技術および、それに伴うテクノロジーの著しい進歩が得られたことにより、多くの施設でAFへのアブレーション治療が可能となった。本研究においても報告がある通り、PAFからSAFへの移行とアブレーション治療は有意に相関していた(OR 0.35, 95%信頼区間0.12-0.82)。そのため、上記①~④を有する患者においては特に注意深く観察するとともに、アブレーション治療を考慮することは有用であると思われる。