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Dr’sメール 痛風患者におけるフェブキソスタットとアロプリノールの心血管保護効果

2019/07/19

榊原記念病院 循環器内科 主任部長

七里 守先生

 

痛風患者におけるフェブキソスタットとアロプリノールの心血管保護効果

New England Journal of Medicine. 2018;378:1200-1210

Cardiovascular safety of febuxostat or allopurinol in patients with gout

White WB, and et al.

背景:痛風患者では心血管病のリスクは増加している。痛風と心血管病を有する患者に対する非プリン体キサンチンオキシダーゼ阻害薬であるfebuxostatとプリン体アナログキサンチンオキシダーゼ阻害薬であるallopurinolの心血管病に対する効果が比較された。

方法:痛風と心血管病を有する患者に対して非劣性試験として多施設二重盲検試験が行われた。患者は、腎機能にしたがって無作為にfebuxostatあるいはallopurinolに割り付けられた。非劣性マージンとして、事前に一次エンドポイント(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、緊急血行再建を要する不安定狭心症の総和)に対するhazzard ratio 1.3が設定された。

結果:6190例が登録され、febuxostat あるいはallopurinolの投与を受けた。平均32か月(最大値85か月)の追跡期間であった。56.6%の症例は本研究のプロトコールを完遂できなかった。45%は途中で追跡が終了した。修正intention-to-treat解析において、febuxostat が投与された335例(10.8%)、allopurinolが投与された321例(10.4%)に一次エンドポイントが生じた(ハザード比1.03、一方向98.5% CI 1.23, 非劣性に対してP=0.002)。全死亡と心血管死亡は、febuxostat においてallopurinolよりも高値であった(全死亡に対するハザード比1.22, 95% CI, 1.01-1.47, 心血管死亡に対するハザード比1.34, 95% CI, 1.03-1.73)。薬剤が投与された期間に基づいた一次エンドポイント、全死亡、心血管死亡に関する解析結果は、修正intention-to-treat解析の結果と同様であった。

結語:痛風と心血管病を有する患者における心血管病の予防効果は、febuxostat allopurinolに対して非劣性であった。全死亡と心血管死亡は、febuxostatにおいてallopurinolよりも高値であった。

 

コメント

本研究結果に基づいてFDAは、febuxostatの使用をallopurinolに忍容性がない症例に限定する改訂を行った。しかし、わが国で行われたfebuxostat for cerebral and cardiovascular events preventionFREED)研究は、心血管イベントは変化なく、febuxostat投与により腎機能低下が有意に抑制されることを報告している。CARES研究が痛風と心血管病を有する患者を対象としたのに対して、FREED研究では、高尿酸血症とそれ以外の心血管病危険因子あるいは慢性腎臓病を有する患者を対象としている。このため、CARES研究では既に高尿酸血症に対する治療を受けている症例が多く含まれている。一方、FREED研究はfebuxostatallopurinolを純粋に比較するデザインではなく、febuxostatとその他の治療を比較するデザインとなっている。結果として、治療割り付け後の尿酸値がfebuxostat群で有意に低値であった。FREED研究のfebuxostatの腎保護効果は尿酸値低下がもたらしたとも言える。これらの結果から、心血管病の予防薬としてfebuxostatを用いるには時期尚早であるが、慢性腎臓病に対する腎保護治療として意味を持つであろう。Febuxostatの安全性は臨床医にとってありがたいものである。厚生労働省はFDAが声明を発表した後も、febuxostat 投与については注意喚起に留めている。EBMのあり方を今一度考えさせられる研究である。