クリニック検索

【FFR:冠予備能グレーゾーンを示す安定狭心症に対するPCI vs薬物加療の長期後ろ向き研究―コンフォータブルレトロスペクティブ研究】

2019/03/14

澄心会 岐阜ハートセンター部長  神谷 宏樹先生

【FFR:冠予備能グレーゾーンを示す安定狭心症に対するPCI vs薬物加療の長期後ろ向き研究―コンフォータブルレトロスペクティブ研究】

Retrospective Comparison of Long-Term Clinical Outcomes Between Percutaneous Coronary Intervention and Medical Therapy in Stable Coronary Artery Disease with Gray Zone Fractional Flow Reserve ― COMFORTABLE Retrospective Study ―

Kubo T, et al. Circ J. 2018; 82: 3044-3051

 

背景:FFR測定0.75から0.80は臨床治療を判断するうえでグレーゾーンである。今回FFRグレーゾーン狭窄に対し、DES(薬剤コーティングステント)によるPCI治療と薬物加療による予後を長期に比較した。

結果:263例のグレーゾーン症例のうち、78例はPCIを185例は薬物加療を受け、平均3.7年フォローし、後ろ向きに解析した。

TVFは心臓死、心筋梗塞、虚血所見による追加PCI、臨床症状による追加PCIの複合エンドポイントとしたが、PCI群で有意に低かった。(PCI群6%vs 薬物加療19% ハザード比0.33 P=0.008)一方、心臓死と心筋梗塞の複合エンドポイントには、両群間で差は認めなかった。

虚血が証明されたことによる追加PCIはPCI群で有意に低かった。(PCI群5%vs 薬物加療18% ハザード比0.23  P=0.005

結論:FFRグレーゾーンの患者において薬物加療群と比較して、TVFはPCI群で低いが、その主な要因は、虚血所見や、臨床症状にもとづく追加PCIであり、心臓死や心筋梗塞には、差は認めなかった。

 

 

コメント:

虚血を認めない症例へのPCIを行ってはいけないことが明らかになって久しいが、FFR基準はDES時代のFAME 2 studyで0.80以下と定義されたものの、PCI適応としての優位性が早期に示されたために、予定症例数が少なってしまったとういう残念さが残る。

過去には、FFRグレーゾーンへの治療にPCIが薬物療法に対して優位性がないとの報告も散見される。

PCI時、血管内超音波の浸透率が90%以上の日本式PCIのデータがFFRグレーゾーンの解釈には必要であった。後ろ向き解析であるが、実臨床と合致した結果に安堵した。つまり、予後をハードエンドポイント(心臓死や、心筋梗塞の発症への関与)とすると、グレーゾーンはPCI不要ということである。また、臨床症状を取るには、PCIが優れているということである。海外のIVUS浸透率が1から10%未満の報告は、PCIの効果を減弱させていたことが予測される。

今回の報告で、厳しいようだが、薬物加療群で、症状が出現したときに、追加薬物で経過を見たか、臨床症状による追加PCI時のFFR値が悪化を認めたかどうかは、かなり重要であるが、触れられてはいない。また治療血管部位による、PCI群と薬物加療群のばらつきに差は認めていないとされているが、LADが責任血管で、追加治療に回ったのは、PCI群で4%に対し、薬物加療群で18%とハザード比0.21 P=0.009と有意差が出ている。一方非LAD血管では、両群間に差は認めていない。

2018年からCOMFORTABLE前向き試験が開始されており、400例規模のデータ集積が予定されており、その結果でさらに今回の研究では明らかでなかった点が解明されることを期待する。