Dr’sメール 脳卒中後の長期生存と機能予後.スウェーデンの脳卒中登録による縦断的観察研究
2019/04/11
【お詫びと訂正】ドクターズメール 表記誤りについて
いつもご覧いただきありがとうございます。
3月22日配信のドクターズメールの執筆者名に下記の通り誤りがございました。
正:名古屋第二赤十字病院 神経内科 第一神経内科部長 安井 敬三先生
誤:安城更生病院 循環器内科 救命救急センター長 循環器内科代表部長 竹本 憲二先生
皆様の混乱を招き、ご迷惑おかけいたしましたことを
深くお詫び申し上げますとともに、訂正し再送させていただきます。
名古屋第二赤十字病院
神経内科
第一神経内科部長
安井 敬三先生
【脳卒中後の長期生存と機能予後.スウェーデンの脳卒中登録による縦断的観察研究】
Stroke2019;50:53-61
Long-Term Survival and Function After Stroke. A Longitudinal Observational Study From the Swedish Stroke Register
Stefan Sennfält,et al.
背景と目的
大規模コホートに基づく脳卒中後の長期予後データは少ない。スウェーデン脳卒中登録(Riksstroke)を用いて、脳卒中後5年までの虚血性脳卒中(IS)および脳内出血(ICH)に関する最近の生存率および機能予後を報告する。
方法
3ヵ月後と12ヵ月後のRiksstrokeの通常の追跡調査以外に、3年前と5年前の1年間のコホートに対して2016年に追加調査を行った。機能依存状態の定義は、修正Rankin Scale≧3とした.元のコホートの死亡率データは、スウェーデン死因登録から得られた。回答のない者について機能予後の推定は多重代入でデータ補完した。
結果
この試験には22929人の患者が含まれ、ISでは87.5%、ICHでは12.5%であった。4回の調査でのフォローアップ損失は12.8%から21.2%でした。ICHの30日死亡率はISよりも高かった(30.7%対11.1%; P <0.01)のに対し、30日生存者では5年死亡率に有意差はなかった(P = 0.858)。機能予後は、すべての追跡調査点においてICHにとってあまり有利ではなかった。5年後の時点で、転帰不良(死亡または依存)はICHで79%、ISで70.6%であった(補完データを含む; P <0.01)。好ましい機能予後は、高齢者や脳卒中前にすでに機能的に依存状態であった患者ではあまり一般的ではなかった。
結論
脳卒中治療の進歩にもかかわらず、長期予後は依然として問題点である。脳卒中後5年で、IS患者の3人に2人以上、およびICH患者の4人に3人以上が死亡または機能依存状態であった。私たちは、ヘルスケアのさらなる発展と脳卒中の研究のための参照として役立つ頑強な長期予後データを示す。
コメント
脳卒中後の最初の30日間の生存率はIS 88.9%と比較してICH 69.3%で有意に低かった.ICHの生存率は、ISと比較して有意に低いことがすでに示され30日生存率の中央値は59.6%とレビューされている(Lancet Neurol. 2010;9:167–176.).
本邦の脳卒中データバンク2015(2012年までの100000例強のデータ登録)によると,急性期病院退院時の生存率はICH 85.3%,IS 94.9%であった.ICHの方が同様に低値であるものの,その数字は大きくかけ離れていた.本研究によると30日以降は病型にかかわらず一定のなだらかな生存曲線を描くとされるので,どの時点においても本邦の方が生存率が高い可能性がある.
12ヵ月後の全脳卒中累積生存率は59〜67%と報告されているが(Stroke. 2003;34:122–126.)(Stroke. 2001;32:2131–2136.)(PLoS Med. 2011;8:e1001033. doi: 10.1371/ journal. pmed. 1001033),本研究では73.8%であった。5年時点の全脳卒中生存率は40〜64%の範囲で,本研究では49.4%であった。以前の研究と比較して比較的生存率が高い理由として,脳卒中患者はStroke unitで治療されるようになり,1995年に53.9%だったが、2010年に87.5%となった.また、抗凝固療法などの二次予防の増加は、再発性脳卒中の発生率の低下に寄与し、脳卒中生存者の死亡率の低下に寄与している可能性がある。また、Riksstrokeレジストリは軽症脳卒中の割合が高い可能性がある。
本邦もStroke unit、抗凝固療法は普及しており比較できれば興味深いが,本研究ではNIHSSなど脳卒中の重症度データがない点が残念である.
機能予後については,Ullbergらは2015年からの大規模な(N = 35 064)スウェーデンの登録ベースを用いて、発症前に機能的に依存していなかった患者のうち28.3%が依存状態(mRS≥3)になったと報告した(Stroke. 2015;46:389–394.).本研究では33.2%に相当し,さらに5年後、全生存者の40.9%が機能的に依存した状態であることがわかった。 機能予後は初年度にわずかな改善がみられたが,その後増悪する傾向であった。
本邦は脳卒中の急性期に続く数ヶ月間を回復期と呼び,リハビリテーション治療にて機能を回復させる時期に充てている.発症1年後の機能回復は推定できるが果たして3年,5年後に機能が維持されているか不明である.