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Dr’sメール 抗凝固薬内服中の心房細動患者は脳梗塞再発の危険性がある

2020/04/13

名古屋第二赤十字病院 
第一脳神経内科 部長 安井敬三先生

【抗凝固薬内服中の心房細動患者は脳梗塞再発の危険性がある】

Stroke. 2020; 51:1150-1157.

Atrial fibrillation-associated ischemic stroke patients with prior anticoagulation have higher risk for recurrent stroke

Kanta Tanaka, et al.

背景と目的
抗凝固薬内服中に発症した非弁膜症性心房細動(NVAF)を伴う脳梗塞は,経口抗凝固薬の脳卒中予防効果を無効にする根本的な問題を示している可能性がある.こうした患者はより脳梗塞再発リスクが高いかどうかを調べるため,抗凝固薬内服の有無に分けて脳卒中再発リスクを評価する.

方法
この研究は,2011〜2014年に行われた韓国15施設の多施設共同前向き研究であるCRCS-K研究および国内18施設の多施設共同前向き研究であるSAMURAI-NVAF研究に登録されたNVAF患者の急性脳梗塞または一過性脳虚血発作に関するプールドデータで構成された.韓国レジストリから4841人の適格な患者とSAMURAI-NVAF全例1192人を組み込んだ.主要評価項目は再発性虚血性脳卒中で二次評価項目は出血性脳卒中と全死亡であった.初回イベントから最大1年間経過観察した.

結果
全コホート6033人の患者のうち,5,645人が解析され,そのうち1129人(20.0%)が発症前から抗凝固薬を内服していた.年齢の中央値は75歳(四分位範囲,69〜81歳)で,2649人(46.9%)が女性であった.4617人・年の追跡データ(追跡期間中央値365日,四分位範囲335〜365日)が利用可能であった.内服群の再発性虚血性脳卒中の累積発生率は5.3%(60/1129)で,非内服群の再発は2.9%(130/4516)であった.再発性虚血性脳卒中の再発リスクは,内服群の方が非内服群よりも高かった(多変量のCox shared frailtyモデル,ハザード比1.50 [95%CI,1.02–2.21]).出血性脳卒中および死亡のリスクに有意差はなかった.

結論
再発性虚血性脳卒中のリスクは,抗凝固薬を内服していたNVAF患者の方が内服していなかった患者よりも高かった.

コメント
本研究は後ろ向き研究のためベースラインの臨床データに差が見られた.抗凝固薬の内服群は,高血圧,脂質異常症,心房細動,脳卒中,心不全,冠動脈疾患の既往が多く,また活動中の悪性腫瘍例が多かった.さらに,脳卒中前の改訂ランキンスコア高値,低体重,NIHSS低値だった.この偏りの影響を減らすためプロペンシティスコア,共有異質性モデルを用いて解析したが,依然として抗凝固薬内服群では,非内服群に比べて,脳梗塞の再発リスクが1.5倍高いことが示された.再発の原因として,薬物アドヒアランス以外に線維化によるatrial cardiopathy,悪性腫瘍合併,アテロームリスク高値が挙げられた.
65歳以上の高齢心房細動患者の6ヵ月後の死亡は(Nguyen TN, et al.: Heart Lung Circ 25(6): 551-557, 2016),フレイル,入院時のせん妄,チャールソン併存疾患指数(心血管疾患,認知症,慢性肺疾患,膠原病,消化性潰瘍,肝疾患,糖尿病,悪性腫瘍,AIDS,片麻痺,中-高度腎機能障害)の順に多変量解析後も有意な因子であり,一方,CHA2DS2-VAScやHAS-BLEDといったスコアは有意でなかった.本研究の内服群は,脳卒中前の改訂ランキンスコア高値,低体重であり,フレイルがより多く存在した可能性が高く,なんらかの影響を与えたかもしれない.
筆者の挙げるlimitationには群間のバイアス,計測困難な脳卒中リスク(AF持続時間,睡眠時無呼吸症候群や心機能),リバロキサバン用量の違いなど日韓の医療環境の相違,短いフォローアップ期間があるが,これを加味して精度の高い治療戦略を立てる必要がある.