Dr’sメール 早期運動合併症を伴うパーキンソン病に対する視床下核刺激療法と薬物療法とのランダム化比較試験(EAELYSTIM trial)における行動学的アウトカムについての二次解析
2019/11/22
順天堂大学大学院 医学研究科
運動障害疾患病態研究・治療 講座 先任准教授 脳神経外 科准教授
梅村 淳先生
早期運動合併症を伴うパーキンソン病に対する視床下核刺激療法と薬物療法とのランダム化比較試験(EAELYSTIM trial)における行動学的アウトカムについての二次解析
Lancet Neurol 17: 223-231, 2018
Behavioural outcomes of subthalamic stimulation and medical therapy versus medical therapy alone for Parkinson’s disease with early motor complications (EARLYSTIM trial): secondary analysis of an open-label randomised trial.
Lhommee E, et al
パーキンソン病(PD)に対する視床下核刺激療法(STN-DBS)は運動合併症の治療として行われているが、行動学的なアウトカムについては議論がある。本研究では、EARLYSTIM trialの患者群においてSTN-DBSと薬物療法の両方で治療した患者(DBS群124名)と薬物療法のみで治療した患者(薬物治療群126名)の行動学的変化について検討した。行動学的変化についてはArdouin Scaleを使用し、アパシーはStarksteinn Apathy Scaleで、うつはBeck Depression Inventoryで評価した。
2年間のフォローアップで薬剤服用量はDBS群で39%減少、薬物治療群で21%増加した。非運動症状の症状変動はDBS群では減少したが、薬物治療群では減少しなかった。ドパミン過剰性の行動異常(衝動制御障害)もDBS群では減少したが、薬物治療群では増加した。アパシーやうつの変化については両者間に差はなかったが、DBS群の12名、薬物治療群では4名で抗うつ薬の服用が中止に至った。一方DBS群の1名、薬物治療群では9名で向精神薬の服用が開始された。またDBS群の2名、薬物治療群の1名が自殺で死亡した。
【コメント】
PDに対するSTN-DBSは薬物療法による運動合併症(ウエアリングオフ、ジスキネジア)の治療として有効であるが、これまでは薬物療法を十分に行った上での最後の手段という位置づけであった。それに対して運動合併症出現後3年以内の早期の患者を対象としたランダム化比較試験であるEARLYSTIM trial (N Engl J Med, 2013) では早期の患者に対してもDBSの導入は薬物治療単独に比べてその後のQOL、運動症状の改善が優ることを示した。本研究はEARLYSTIM studyの患者群における行動学的なアウトカムについての二次解析結果であり、行動学的側面からも早期DBS導入の妥当性を示している。これらの結果は今後DBSの適応や導入時期を考慮する上での指針になると思われる。