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Dr’sメール SGLT2阻害薬は2型糖尿病患者の心血管イベントを抑制する:大規模臨床試験のメタ解析

2020/06/05

【お詫びと訂正】Dr'Sメールの配信エラーについて

いつもDr'Sメール をご覧いただきありがとうございます。
5月8日に配信させていただきましたDr'Sメールにおいて、途中までしか送信されない不具合がございました。
ご迷惑をお掛けいたしましたことを深くお詫びし、再送させていただきます。

名古屋第二赤十字病院 顧問
医療法人順秀会 副理事長
メディカルパーク今池 院長
平山 治雄先生

SGLT2阻害薬は2型糖尿病患者の心血管イベントを抑制する:大規模臨床試験のメタ解析
Sodium‐Glucose Cotransporter 2 Inhibition for the Prevention of Cardiovascular Events in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus: A Systematic Review and Meta‐Analysis. J Am Heart Assoc. 2020 Feb 4; 9(3): e014908.
名古屋第二赤十字病院 顧問
メデイカルパーク今池 院長 
医学博士・循環器専門医 平山 治雄

【背景】いくつかの研究によりSGLT2阻害薬が2型糖尿病患者の心血管合併症抑制する効果が示されているが、様々な背景を持つ患者群に一貫して心血管イベント軽減効果が得られるのかについては明らかにされていない。
【方法と結果】
糖尿病患者を対象に、3種のSGLT2阻害薬(カナグリフロジン、エンパグリフロジン、ダパグリフロジン)の効果を検討した4件の大規模試験(CANVAS, CREDENCE, EMPA-REG OUTCOME, DECLARE TIMI 58)について心血管疾患、腎機能低下、心不全の病歴が無い患者も対象にメタ解析を行った。
対象患者は2型糖尿病患者38,723例、ベースライン時の心血管疾患22,870例(59%)、腎機能低下7,754例(20%)、心不全4,542例(12%)であり、主要心血管イベントは、主要な心臓有害事象(MACE)3,828件、心不全による入院1,192件、心血管死1,506件、全死亡2,612件であり、追跡期間は平均2.9年であった。
逆分散重み付けを使用した固定効果モデルを使用して、ハザード比の概要と95%のCIを推定した。
解析の結果、プラセボ群に対してSGLT2阻害薬投与群では主要な心臓有害事象リスクが12%低下(ハザード比0.88; 95%CI、0.82–0.94; P <0.001)、心血管死リスクが17%低下(ハザード比0.83; 95%CI、0.75–0.92; P <0.001)した。またSGLT2阻害薬治療群では心筋梗塞リスクを12%(ハザード比0.88; 95%CI、0.80–0.97 P <0.01)低下させたが、脳卒中リスクは低下させなかった(ハザード比0.96; 95%CI、0.86–1.09)。またSGLT2阻害薬治療群では心不全による入院リスクが32%(ハザード比0.68; 95%CI、0.60-0.76; P <0.001)低下し、全死亡リスクが15%(ハザード比0.85; 95%CI、0.79–0.92; P <0.001)低下した。
2型糖尿病に対するSGLT2阻害薬の心血管イベントに対する抑制効果は、心血管疾患、心不全、腎機能の低下の有無にかかわらず一貫して認められた。
サブグループ間の効果の唯一の違いは脳卒中であり、脳卒中については腎機能が低下した患者でSGLT2阻害薬による抑制効果が認められた(ハザード比0.75; 95%CI、0.59–0.96)が、腎機能が維持されている患者群ではイベント抑制効果は認められなかった(ハザード比1.05; 95%CI、0.91–1.2)
【結論】SGLT2阻害薬は、心血管疾患の病歴に関係なく、2型糖尿病患者のさまざまなサブセットの心血管疾患および死亡を保護する。

【解説】2型糖尿病患者におけるSGLT2-阻害薬の心血管イベント抑制効果を示した複数の大規模臨床試験により、SGLT2-阻害薬の有用性は既に確定した感があるが、それぞれの大規模臨床試験の目的、対象は異なっているので、メタ解析を行った本論文は非常に重要である。
ちなみに、EMPA REG OUTCOMEは対象患者がほぼ100%心血管疾患合併例であり、二次予防効果の検証であり、その有用性が示された。
CANVAS試験では約35%がハイリスク患者で、一次予防効果の検証であったが、一次予防群でのプライマリーエンドポイントは信頼区間の上限が1を超えており、SGLT2阻害薬は心血管疾患の二次予防薬の役割を果たしていることが示唆された。
DECLARE TIMI 58の対象患者は動脈硬化性心血管疾患を合併するか、ハイリスクの2型糖尿病患者で、心血管と腎疾患のアウトカムの評価が目的であった。結果は主要心血管イベントについては非劣性であったが、心血管死または心不全による入院を減少させた。
CREDENCEは、アルブミン尿を有する慢性腎臓病を伴う2型糖尿病患者において、カナグリフロジンが腎疾患のアウトカムに及ぼす影響を検討した。他の大規模臨床試験と異なり、心血管疾患合併例が少ない事が特徴である。結果は、腎不全および心血管イベントの発症リスクはプラセボ群より有意に少なかった。
これらの大規模臨床試験のメタ解析により、SGLT2阻害薬は心血管疾患の既往の有無にかかわらず、2型糖尿病患者における心血管イベントおよび総死亡を抑制することが確認された。2型糖尿病患者に対して、心血管疾患を回避する事を第一目標とする場合は、SGLT2阻害薬を第一選択薬とすることが推奨される。