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Dr’sメール 【日本での高リスク虚血性脳卒中患者の2次予防に対する抗血小板薬cilostazolを含む2剤併用抗血小板療法(DAPT)の有効性と安全性】

2019/09/05

安城厚生病院 脳神経内科

脳神経内科代表部長
臨床検査科代表部長

川上 治先生

【日本での高リスク虚血性脳卒中患者の2次予防に対する抗血小板薬cilostazolを含む2剤併用抗血小板療法(DAPT)の有効性と安全性

Lancet Neurol 2019; 18: 539-548.

Dural antiplatelet therapy using cilostazol for secondary prevention in patients with high-risk ischemic stroke on Japan, open-label, randomized controlled trial  

Kazunori Toyoda et al.

 

背景:非心原性虚血性脳卒中再発高リスク患者の二次予防において、aspirin(Asp)clopitogrel(Clo)との併用療法(DAPT)は、単剤と比較して脳梗塞早期では有効であったが、長期では出血のリスクが高くなるため無効となっている。一方cilostazol(Cil)は、出血リスクが少なく、小規模研究ながら、Cil+AspDAPTAsp単独と同等、そしてAsp+CloDAPTより出血が少なかったとの報告もあり、Cilと他の抗血小板剤併用療法の長期効果について脳梗塞再発と出血等の有害事象について単剤群と比較する大規模多施設共同無作為査研究を行った。方法:無作為オープン試験、4,000例の予定、2085歳で,8-180日以内に診断された非心原性虚血性脳卒中,MRIで責任病変が確認されたもの,抗血小板療法としてCloあるいはAspを単剤投与しているもの,次のうち≧1つが該当するもの(頭蓋内主幹動脈に≧50%の狭窄病変;頭蓋外動脈に≧50%の狭窄病変;危険因子[≧65歳;糖尿病;高血圧;末梢血管疾患,慢性腎臓病;虚血性脳卒中既往;虚血性心疾患既往;現喫煙]を2つ以上保有),観察期間中の外来通院が可能と思われるもの。除外基準:塞栓源となり得る心疾患,抗凝固薬服用例,閉所恐怖症やペースメーカー植込みなどによりMRI不可,血管形成術・ステント・CABGなどの手術予定例,1年以内の薬剤溶出性ステント植込み例など。主要評価項目:24時間以上継続する症候性虚血性脳卒中の再発。副次評価項目:全脳卒中,くも膜下出血あるいは脳内出血,虚血性脳卒中あるいは一過性脳虚血発作,全死亡,脳卒中・心筋梗塞・血管死,全血管イベント,有害事象および薬剤副作用,重度および生命にかかわる出血(GUSTO基準)。結果: 患者登録は20131213日から2017331日まで、参加施設は292、登録の遅れから1884例が登録、DAPT932例(平均年齢69.9±9.2)、Monotherapy947例(平均年齢69.7±9.2)、血管リスクは各群で有意差無し。平均1.4年の観察期間において、虚血性脳卒中の再発は、DAPT3%(年率換算2.2%)Monotherapy7%(年率換算4.5%)で、DAPT群が有意に少なかった(HR 0.49; 95% CI 0.31-0.76, p=0.0010)。重篤あるいは死亡につながる出血イベントは、DAPT(年率換算0.6%)Monotherapy(年率換算0.9%)で有意差無し(HR 0.66; 95% CI0.27-1.60, p=0.35)。全有害事象は、DAPT28%Monotheapy24%;重篤例はそれぞれ10%,15%、消化管出血は4%,4%と有意差がなかった。結論: 非心原性虚血性脳卒中再発高リスク患者の二次予防において、CilostazolAspirinまたはClopitogrelとの併用療法は、単独療法と比較して脳梗塞再発率のリスク軽減と有害事象が同等であることが長期使用においても明らかとなった。コメント:脳卒中治療ガイドライン2015では、DAPTの長期療法はgrade Dとされていた。しかし実臨床においては、単剤で再発を繰り返す例にはDAPTを長期継続せざるをえないケースも存在していた。本研究は、エビデンスレベルの高く、日本発の初めてDAPTの長期有効性を証明した点で重要である。